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霧の万年床〜楠 均のBGM日記2006/8 | ||||||
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この夏は暑かったスね。北海道のオホーツク沿岸に近いさびれた町に10日間ばかり帰省したのですが、ここも暑かった。オホーツク地方は一帯にサビれていて流氷以外にさしたる観光商品もなく何につけても世に知られる機会がないので、その地方にオホーツク型の気候と呼ばれる世にも珍しくはないけれど、一応類別されるだけの特徴を持った気候が存在することを知る人は少なく、僕が知ったのもここ数年のことだ。オホーツク型の気候の特徴は夏暑くて冬寒いということだ。高校生の頃、39度ほどの気温の中で裸で走り回ったことがある。仲間たちも僕同様サルに毛が生えた程度の連中で、女子が運んでくれるバケツの冷たい水目当てにというか女子の視線目当てに、サルにも劣る下卑た言葉を吐きながら雑草のはえ揃ったグランドを力一杯駆け回ったものだった。内地(と北海道の人間は普通に言う)で同じことをやったら確実に熱中症であの世行きである。サルどもがそうならなかったのはオホーツク型気候のおかげである.陽射しはバカに強いが風は涼しい。風景の輪郭が異様にくっきりしているのは空気が乾燥しているせいか。当時の僕の視力は2.0を越え、オジロワシもかくやという視覚世界に生きていたから、この日のことは昨日のことよりも鮮明に覚えている。それにひきかえ新聞の四コマ漫画のフキダシさえ読めなくなってしまった今では、すべてが霧の中の出来事のようにもぞもぞしている。その日のことだったかはわからないが、天気予報で「本日の最高気温は北海道エンガルチョー!・・・でした。」と高らかに宣言された時のこともやはりはっきり覚えている。後年「遥かなる山の呼び声」の撮影時に通りすがりの我が町の駅のホームに数瞬間降り立った浅丘ルリ子は、「しけた町ね」と一言残して吸いかけのタバコをポイと捨てて立ち去ったというので、町民の大きな怒りを買ったらしい。「遥かなる山の呼び声」に浅丘ルリ子が出演していたかどうか僕は知らない。「寅さん」のリリーを見るかぎりとてもそんなことをする人には見えない。たぶん僕の聞き違いだろう。案外、セリフだったりして。映画見てみないと。それはともかく今も昔も人々の耳目をひく名所や話題に無縁な土地にあって(そういえば寅さんも商売に来なかったし)この最高気温の知らせが町民の気分を最高にしない訳がなかった。日本で一番ということであるし「もうサイコー!」ということにだってなりかねないその「最高」である。この日から三日三晩町民が浮かれて踊り騒いだとしても無理はない。少なくとも僕はこの放送をグラミー賞(アカデミー賞の方がいいかな)を受賞するときのような晴れがましく誇らしい気分で見た。寒い方でいうと、僕が経験した冬の最低気温は零下32度である。一体どんな寒さだったかもう思い出せない。配達される牛乳がシャリシャリに凍ってふたを押し上げ、毎朝ビンから飛び出していた。そういうことは覚えているが特に寒いと思ったことはない。零下32度を記録した日は、確か陸別という町に勝った日だったと記憶している。陸別は内陸に位置する日本一寒いことで知られた町である。多分しけた町である点において変わらないだけに、一頭地を抜いたその名声にかねてから強い妬みを感じていた僕は、この日の勝利に万歳を連呼し雪の中で犬と取っ組みあってみたいような高揚感に打ち震えた。寒さを感じなかったのはそのせいかもしれない。(こうした戦いでは0.1度の違いが大問題であるし、たとえ気候が同じ隣町であっても心を許せないライバルとなる。)夏冬を通じて僕が体験した温度差はしたがって70度を優に超えたことになる。小さなしけた町の話である。常夏サモアの住人が観光で南極に行ったという話とは訳が違う。今これを書きながらも強い優越感にうっとりしている。ここんとこの気象異変はしかしこの優越感を揺るがしかねない勢いで進行している。僕が生きている間くらいはオホーツク型気候が健在であってくれればと願わずにいられない。
コメント
「遥かなる山の呼び声」ボクも楠ちゃんの故郷が舞台というそれだけの理由でずいぶん前に一度観ましたが、たしかに浅丘ルリ子さんの印象は薄いと言うか、覚えてないですね(^^;
ただただ、ものすごい雪と、ほとんど何もしゃべらない健さんだけがあの映画の記憶です。
もう一回観てみようかな…。
夏がそんなに暑いとは知らなんだ!
携帯レコミュ二、僕もいつの日か・・・。
やはり浅丘さん出てましたか。沈黙だけが印象に残ると聞いて更に見たくなりました。いつの日か・・・。
そう、気温はすごいですけど、何しろ若いときの話だから・・・(謙遜)。
kokoさんへ
次はお父様とお国自慢バトルを。
でもほんとにせこい自慢をする人がいて、そのネタ収集力にはかなわないと思うことあります。
そうそう、富良野というのは名実共にエース級ですから、巨大な嫉妬を禁じ得ません。俺んちの近くだと訓子府(くんねっぷ)というすばらしい丘陵畑作地帯があって農家も金持ちなんだけど、でも観光に必要なキュートな魅力には乏しいかも。ああ妬ましい。
何気候というのかしら?
私もかぎりなく内地に近い実家にこの夏帰省したのですが、あまりの暑さにまいりました。
雨が降っていたせいか、ムシムシとした熱帯夜であれにはほんとなんのために夏にわざわざ高いお金払って帰省してるんだよと詐欺にあった気持ちになりました。
でも北海道で8月末なのに海水浴ができたからいいか。
旭川は内陸型気候だと思います。大雑把に言えば。
(て、言うまでもないですか)
いけさんはそうですか,江差追分の付近ですね。
江差追分いいですよね。
オホーツクで一度泳いでとても怖い思いをしました。
海水浴には向かないですあそこは。