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霧の万年床〜楠 均のBGM日記

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      2007年 09月 23日

      8月17日。 

      上野でインカ・マヤ・アステカ展。

      息子が夏休みの研究発表をでっち上げようと言うのだ。炎暑のさなか、電車賃を使って上野まで足を運んだその苦労を評価してもらおうという卑しい意図が見え見えである。僕も子供の頃からそういう卑しいことばかり考えていて、気がついたらダメな人間になっていた。

      ともあれ、暑くてぼーっとして小人閑居して悪事もナメクジも宝くじもない有様だから、のこのこついてゆく。

      行ってみて分かったのだが、年代順に並べるとインカ・マヤ・アステカではなく、マヤ・インカ・アステカだ。年代順ならリンゴ・ジョン・ポール・ジョージと言うべきところを普通ジョン・ポール・ジョージ・リンゴと言いならわしてきたのは何故か。ロックバンドの場合おおかた予測はつくけれど、インカマヤとなるとどうなのか。マチュピチュのあるインカは巷の関心も高くカリスマ性もあってジョンとポールみたいなものだということだろうか。

      状態のいいミイラが今回の目玉のひとつだ。なるほど間近で見ると表面の質感が若狭イモに似ている。

      信仰に関わるあれやこれやが強烈だ。たとえば生け贄とか、ミイラになった王様担いで大名行列とか。村から1歩も出ることがなかったであろう農民たちがこれらをどのように受け入れていたのかとても興味深いけれど、当然のように普通の人々の声も姿も記録に残っていない。謎めいて魅力的なアステカ文字もおおかたの人には何の関係もなかったのだし、世界遺産マチュピチュだって当時の王様の私領だった可能性が高いらしくて、庶民にとってはやれやれまた殿様の道楽が始まったよということだったかもしれない。違うかもしれない。

      王を頂点とする国体はまったく揺るぎなく一体だったろうと思う一方、アステカの終わり頃人々はさすがに生け贄にうんざりしていたという記述もある。そりゃそうだよな、と現代に生きる僕は思う。でもそれを記述したのはたぶんスペイン人だと思う。我々の侵略は虐げられた民の解放を同時に意味していたと近代以降の国家なら言うし、当時のスペイン人の中にだって本気でそう考えた人はいたかもしれない。でもアステカの農民にとってはスペインもアステカもあさってもなくて、歴史に残る為政者どもの大騒ぎこそが迷惑で、それさえなければ字なんかなくたってそこそこ楽しく暮らしていたのかもしれない。まぁあくまでそこそこだけど。

      大昔の宗教儀式を残虐とか非道とか言うことはむつかしい、と現代人である僕は感じる。同様に、ヨーロッパ人による南米の侵略だって今の視点から裁くことなんてできない、と言われれば半分はそう思うけど半分はそう思わない。

      大雑把に言えば、時代が下れば下るほど情報は増えて視点は複数になり、人間の行動は批判的に検証される機会が増えるだろう。時代が同じでもアステカとスペインでは手にしていた情報の量と質(というか性格)が全然違うから、まぁ、アステカに比べればスペインは自分のやってたことの意味を知り尽くしていたんじゃないのと思われてもしょうがないし、だからニール・ヤングが「コルテスは人殺し」と歌いたくなったのも彼がアステカ顔であるからという理由ではおそらくないと思う。

      でも、現代人から見れば当時の世界はグローバリズムのハシリでまだまだ若くてナイーブで、掴み合いや殴り合いは当たり前のことだったろうと想像されるし、そんな事言ってる現代人にしてからが50年100年経てばあっというまに俯瞰されているわけで、何という野蛮な世界に生きていたと言われること必定で、実際身辺を見渡せばナイーブなことだらけでああこれがやがて歴史の検証を受けるのだろうなと思い当たることもいくつかあるくらいだから、本当に幸せとは馬鹿騒ぎと無縁のところで自分の手ではかなく力強く手にするよりほかないのだとアステカ文字の存在すら知らずに死んでいった無数のアステカ人を思いながら感じた。

      暑気払いのつもりが益々暑苦しくなった。

      | Posted By XNOX クスノキス 投稿日: 2007年9月23日 14時58分 更新日: 2007年9月27日 18時5分

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