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霧の万年床〜楠 均のBGM日記2007/3 | ||||||
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シンゾウの痛みが二日続く。不安にかられ医者に行く。
看板にいろんな「科」が書かれてある近所の病院。ベテランの看護婦さんに症状を訴える。看護婦さんは血圧を測りながら「顔色が黄緑色ですがいつもそんな?」と聞くので「ハイ」。看護婦さんの眉間にぎゅっと力が入る。死体安置所を思わせる地下の暗がりでX線写真と心電図。医者の診断を待つ間、文春の土屋教授のエッセイで大いに笑う。それを見た先ほどの看護婦さん、眉間のしわをいっそう深くして、心なしかぞんざいに僕の名を呼ぶ。診察室で、僕より若いくせに白髪でギョロ目の医者に問診を受ける。あちこち遠慮なく触ってくる。ニタニタ笑っている。そして「筋肉痛じゃないですか?」と言う。心臓が止まりそうになる。「誰?この俺が?筋肉痛?おいおい筋肉痛で医者に行くトンマがどこにいる。トンマな君んとこにはそんなトンマが日々大勢押しかけてるか知らんが。人を見てものをいいたまえ。忙しいと痛み、暇になると痛み、風呂に入ると痛み、煙草を吸うと痛み、酒を飲むと痛む。そんな筋肉痛がどこにある?」そう言いたかったがなるべく人の好い顔をして「そんなこともあるんでござんすかねえ。へへへ。」と感心して見せた。医者は続けて「写真はきれいだし、心電図も問題ないし、血中の酸素濃度なんて100%ですよ。ははは。」と破顔する。一体何がおかしくてそうニヤつき、しまいにはバカ笑いするのか。私は金を払って笑われにきたのではない。屈辱でシンゾーが痛む。ヤブ医者め、いつか懲らしめてやる。そう言ってやりたかったがいかにも安心を装って「すっかりお手を煩わしちまいまして。」と頭を下げてその場を去る。怒りはなるべく溜め込んだ方が復讐のカタルシスが大きいと、かつてハリウッド映画から教わった。おもてに出て看板を検分して驚く。循環器、という項目が一番最後に投げやりに書かれてありしかも剥げかかっている。いかにも付け足しである。なるほどヤブな訳である。近所で済まそうとしたのがよくなかった。
そぼ降る雨の中、少しだけ足を伸ばして別な病院へ行く、今度は看板を確かめて。混雑していないのが気に入った。土屋教授のエッセイでひとしきり笑おうと思ったら、何せすいているのですぐに名を呼ばれた。経験豊かそうな齢のいったお医者が、花粉症なのか、マスクごしに失礼と丁重にことわって、あれこれ訊ねたり測ったりの後、うーむと唸る。「どんなですか」と聞くと、「心臓の痛みが丸一日続いたとしたら、あなたはとっくにこの世にいないでしょうなあ。」とのたまう。先ほどまで思慮深げであった目が不真面目にうわついている。耳を疑ったが、老人相手に暴動起こすわけにもいかず、今日のところは潔く引き下がることにする。釈然としないが、家族を安心させるために全快祝いということにして「てんや」で天丼をおごる。捲土重来!てんどんちょうだい!
S(息子)が「バッテリー」という話題の映画を見るというので、よっしゃ、全快ついでについて行く。2時間近く野球少年たちの汗を鑑賞する。
コメント
思っていたのですが、やっとわかりました。
土屋の口車だったのですね。