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霧の万年床〜楠 均のBGM日記2007/4 | ||||||
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2007/5 | ||||||
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「おっかあ行ってくるよ。帰ったら熱燗きゅっとやらしちくんな。」まんじゅう担いで行商に出る。やけに重いので峠の坂道で荷を下ろすと、とことんとんスネアドラムに化けていた。ぎゃっ。わしの商売何じゃった?狸の仕業に違いない。早いとこ帰って一杯やろう。くわばらくわばら。
昔々、木製のタンスにすあまその他の素朴な和菓子を詰めて大風呂敷に包んで売り歩く狸によく似たおじいさんがいた。狸じいが来ると母親とのやりとりをずっとそばで見ていた。肩に食い込む荷の重さにそのことを思い出した。がっしりした手、ゆったりした物腰。木のタンスはよく使い込まれ、中に敷いた布巾は清潔だった。あの狸じいの気品はどこからきたものだろう。小さな町のあちこちに狸じいの笑顔に似た気品ある気配が満ちていた。気品はたぶん余裕から生まれ、余裕はたぶんくよくよしないところに生まれた。野心を持たず生活に悩まない。当時の日本は比較的単純で安定した身分社会で、尚且つおおかたの職業は上昇一方の景気によってうまいこと行ってたのだろう。現金とまんじゅうの交換は交歓。状況がシンプルだと嬉しさが増すのだろうか。売買のシステムも笑顔の交換を伴って解き放たれるというか一瞬ふわっと浮き上がる。その時現金は木の葉に化ける。犬は喜び庭駆け回る。まんじゅうの化けの皮はがれて宇宙にあんこが飛び散る。チルチルミチルはパンを撒く。しかし昔々の楽しき我が家にたどり着けるものだろうか?
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