2005/3 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 |
27 | 28 | 29 | 30 | 31 | ||
2005/4 | ||||||
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
a person powered by ototoy blog
recommuni四方山話無料ダウンロード・キャンペーンが始まった。レーベルのみなさんのご好意で、期待の新人とかいろいろ押しモノを提供していただいた。バラエティ豊かなラインナップになっていると思う。この機会にたくさん聴いていただき、がんばってるアーティストたちを知ってほしいと思う。
無料ダウンロードになるとさすがにダウンロード数の桁が違う。あたりまえかもしれないが、やっぱり100〜200円でも、有料となるととたんに手が伸びない。
今クレジットカードしか使えないので、その番号を登録することに抵抗がある、という人もいるだろう。危険度という点では、暗号化されるネット上より、伝票の控えを取られるリアル店舗のほうがよっぽど高いのにな、と思うけど。
よくあるのは試聴をさせてほしいという意見だ。中には「試聴がないなんてありえない!」なんていうクレームに近いものもある。確かにありえないと思われるほど、今や音楽配信サイトでは30〜45秒の試聴があるのがあたりまえのようになっている。だけどrecommuniではあえて試聴は提供していない。
友人つながりの人の個人的な「レコメンド」に重点を置くサービスであり、試聴があるとレコメンドの意味が半減してしまうだろうとか、試聴といえども聴くことに対価は支払うべきだろうとか、1,000円もするようなものなら「お試し」があるほうが親切だが、100円のものにはなくてよいだろうとか、社内でさんざん議論を重ねてきた。ボクなんか最初は「試聴はつけて当然」派だったんだけれど……。
いろんな「あたりまえ」をほんとにそれでよいのか?と考えてみる。recommuniは音楽でそういう場になりたい。音楽マーケットはあまりにもいい加減に巨大化し、またある時点から縮小してきた。これからは、レコード会社はもちろんだけど、アーティストもリスナーも「音楽マーケットのありかた」というものをもっと真剣に考えていくべきだと思う。
単に今より多く売りたいだけなら、recommuniは試聴を提供すればいいと思う。しかし試聴の功罪というものをようく考えて出した目下の結論が「試聴なし」なんである。
「試聴があるべきだ」と言う人は「どんな曲か判らないのに買う気がしない」という理由を挙げる。試聴をして何が判るんだろうか?「だいたいこんな感じの曲」ということか。それで好き(な感じ)だったらダウンロードする。でなければそれでサヨナラ。しかし、あなたはわずか30秒でそれを好きかどうか的確に判断できるのか?またあなたの好みは永久不変のものなのか?そもそもあなたは自身の好みを完璧に知っているのか?
「たかが音楽なんだから、今好きだなと思うものを選んで聴ければそれでいいじゃない」と言われるかもしれない。音楽って多くの人にはその程度のものなのかなぁ、とも思う。
ボクは音楽好きの部類だと思うし、ボクの思うことが他の人には当てはまらないかもしれない。だけどボクの音楽に対する好みはどんどん変わっていった。変わっていったと言うより増えていった。最初とっつきが悪くてよく判らなかったものも、聴いてるうちに好きになることがよくあった。
やはり友人に聴かされてとか、ジャケ買いしてしまったので元を取る?ために何回も聴いているうちにとか。いちばん印象に残っているのが、“カクタス”というグループ。元“ヴァニラ・ファッジ”、その後“BBA”としてジェフ・ベックとグループを組むベースのティム・ボガートとドラムのカーマイン・アピスが在籍したハードロック・バンドだ。大学のときやっていたバンドでコピーをすることになったので初めて聴いたのだが、初めのうちは全然いいと思わなくて、ただノルマを果たすように、でもドラムがむずかしいことをやってるんで、ほんと何回も何回も聴いた。それがあるとき急に解ったのだ、そのバンドのよさが。自分でも不思議だったが、脳の中で新しい回路がピンとつながった感じ。それからはもう今に至るまでマイ・フェイバリット・バンドのひとつだ。
もし30秒の試聴で“カクタス”の曲をチェックしていたら、間違いなくそれでサヨナラだったろう。何回聴いて感動したかわからないその至福の時に、ボクは出会えないままだったろう。
30秒で好きになる曲もあるだろうが、それじゃ判らない曲もある。より参考になるのは誰かがすごくそれを好きだという事実だ。もちろん音楽の好みは人により違うだろうが、それをすごく好きな人がいる以上そこには何かあるはずだ。それを知るだけでもおもしろい。だからレコメンドに意味がある。企業やマスコミの売らんがための文章ではなく個人の正直な気持ちが参考になる。判らない曲は聴かない、では人生あまりに味気ないではないか。
人が正直にレコメンドした曲が、100円程度でそこに並んでいるんだよ。店でちらっと試聴してアルバムを買うより、20アーティスト分1曲ずつ買ってみるほうが、いろんな音楽と出会えて全然いいように思うが。で、何回か聴いてみる。よく判らないものもとりあえず何度も聴いてみる。その中で好きになったものはCDを買ったり他の曲もダウンロードすればよい。
音楽は何度も聴いてみなければほんとのよさは解らない。
ほんとによい音楽は何度聴いても新しい喜びを与えてくれる。
2005.04.03
福岡智彦
コメント
僕はレコード店でも試聴はほとんどしません。レコード・ハンティングの楽しみが減るから。試聴で選んで買うなんて、釣り堀で魚を釣ってしまうみたいで、無駄は多くても、海や川で釣りたいという感覚かな。個人としては、そういう人間です。
でも、レコミュニにおいては「試聴というサービスもあるべき派」です。
これは、なければいけない、ということではないです。
その楽曲の試聴ファイルをつけるかどうかはレーベルやアーティストが決めればいい。試聴ファイルを聞くかどうかはユーザーが決めればいい。
両者がそれを望んでいるのに、レコミュニのポリシーゆえにそれが出来ない、というのは良いことに思えないということです。大手の他のダウンロード・サイトと同じような、管理者側からの制約に思えます。
アーティストとリスナーの距離を出来る限り近くする。そこに余計なポリティクスを絡ませない。そういうサービスと考えたら、試聴もアーティストとリスナーが選択できるようになっていればいいだけで。
逆にいうと、レコード店で今、行われている試聴は、アーティストにもレーベルにも許諾を得ずにやっている訳で、おかしなことですよね。
試聴があるとレコメンドの存在意義が、というのも、実はないと思います。レコード店では試聴機でフルに試聴ができる状況がありますが、それでも店員の書いたポップの有無、その内容が大きく売り上げを変えます。とりわけ手書きだと効く、というのは、やはり、個人の言葉の重みというのがあるからでしょう。
試聴機があっても、ポップの言葉だけ「買い」とする人も少なくないはず(僕はそうですね)。あるいは、ポップの言葉で初めて試聴してみようと思う人もいたり。そのあたりはいろんなケミストリーがあるはずです。
そうそう、僕はレコード店では試聴はほとんどしないと書きましたが、ネットでの試聴はたくさんします。何かのきっかけで、興味あるアーティストを見つけたら、検索などで試聴ファイルを探します。最近だったら、South San GabrielとかLukeTempleとかJesca Hoopといったアーティストをネット上の試聴を通じて知って、ファンになりました。ネット上の試聴ファイルがなかったら、このあたりのアーティストを知ることはまずなかったでしょう。
30秒の試聴で判断がつくか、ということにしても、人それぞれに思います。僕に関して言えば、判断は99パーセントつきます。何十年もの間、ありとあらゆる機会を使って、新しくて面白い音楽を探すことが仕事とし、趣味ともしてきたわけですから、そのくらいは出来ないと困る。
ただし、その場合の判断というのは、その曲が30秒以上聞く必要がない曲か、もっとちゃんと聞かなければ分からない曲か、という判断ですね。一番最初のふるい、みたいなものです。
そこに曲がたくさんあればあるほど、ふるいの存在は重要にはなります。
自分の日記でも「ジャケ買い」(http://recommuni
「沢山集めて」かつ「持ちつづける」ことで初めて見えてくる世界がある、と私は思っていますが、全ての人がそうではないだろう、とも信じています。その辺は「コレクターシップ」(http://recommuni
一度縁を持った音楽から、最大限得られるものを引き出そうとあがくことが私は多いのですが、なんでそんな面倒なことするの?、気に入ったものだけ聴いて、ぴんと来なかったのはそれまででいいじゃない、と不思議がる方もきっと多いでしょう。
私はしつこくしがみついて初めて楽しさが分かった経験があるので、ごく自然にそうした作業を続ける習慣が身に付きましたが、これもまた全ての人がそうではないのだろうな、と。でも実はどちらがいいとも一概には言えないのでしょうね。
限られた資金と時間を活かすために「試聴必須!」と思う人もあるでしょう。結局はその時の経済事情によるのではないでしょうか? 100円あれば中古のCDが一枚買えますし。
かように人それぞれではあるのですけれど、だからこそ「身銭を切って手に入れてしまわないと分からないこともある」ことを知って欲しいし、「しつこく聴きこんで初めて分かる楽しさもある」ことも知って欲しいと思います。そんな「リスナーとしてのあり方」がぶつかり合えるなら、コミュニティとしての楽しみも増すのではないかと信じています。