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モヘンジョだろ!!俺は日常の会話で時々AppleやジョブズをDISることがある。例えば、iTunes (Music) Storeのモデルは結局過去の音楽産業の販売モデルとあまり変わらず、寡占化している分、たちが悪く、さらにあたらしいアーティストのプロモーションの機会を、店頭販売メインの時代より大きく削っている。みたいなことだ。仲間内で飲んでいる時だけじゃなく、不特定多数の目に晒されるメディアのインタビューなどでも苦情に近いことを公言していた。しかし、実は数年前から分かっていた。DISってはいても、そんな状況が限られた中で最善の選択肢の一つだってことが段々分かってきていた。2001年から地道に10年間積み上げたiPod, iPhoneとiTunesを中心とした環境がもし無かったら、音楽産業はもっと混沌としたものになっていただろうし、その混沌の中から今のAppleが実現している以上の体験が何か産まれただろうか。訃報に触れて、どんなに俺がDISったって(あたりまえだが)平気だったジョブズがあろうことか死んでしまったことに、大きな喪失感を覚えた。自己分析的に言えば、エディプスコンプレックスに似た心の動きなんだろうなと思う。
iPhone、iPadのアプリ戦略にしても、iBooksにしても、現状を見ると「酷い」ことはたくさんある。けれども、レイヤを少し上げて見たときに、特にユーザー視点からサービスを見たときに、良さそうな未来に向かって敷かれたレールが見える、というのがジョブズのいたAppleのサービスだったような気がする。
音楽についてはどうも色々ハズしてるなぁと思っていたジョブズを見直したきっかけは2007年の四大メジャーレーベルに向けて発したDRM廃止の提言*だった。当時はOTOTOYの前身であるレコミュニが瀕死の状態で、タワーレコードCTOとして水面下で頑張ったけど、DRM無の音楽配信事業をNapster以外に展開することが事実上無理ということが確定し、(そのことは直接は関係ないけど)タワレコを辞任することを決めた時期だった。理想と現実の解離具合に結構深刻に落ち込んでた時期に、あの提言を見て、「なんだジョブズ、目的同じだったんじゃん。」みたいな妙な親近感を覚え、安心した。同時に、自分が日本でやってることよりも遥かに大きなスケールで、より目的達成に近づいている彼を、改めて13年上の先輩として尊敬したことを憶えている。
* 原文はAppleのサイトではもう存在しないようだ。 http://www
iPodで我々の耳を征服したジョブズが次に狙ったのはリビングだったが、第一弾のAppleTVは大コケした。あまりにも盛大に躓いたのでDISれなかった。褒める人が全く居ないモノをDISっても悪趣味だし、皆最初から同調するから全く面白くない。そうなるとむしろ、リビングルームの大画面に目を付けたAppleの先見性を褒めたくなった。さらにネット時代の家族の在り方に思いを馳せたりした。しかしその後、AppleTVは無かったことになるかと思っていたらiPadとの組み合わせで第二世代目がしぶとく出てきた。高速回線と、権利者の理解によるコンテンツ供給が必要不可欠なデバイスだが、低価格であること、またAirPlayの便利さや、テレビ離れなどの時代的背景もあり、第一世代に比べればそんなに悪くない流れに見える。iPadがうまくいっているのは皆さんがご存知の通り。このままうまく普及すれば、俺は今まで通り、他人が言わない、気づきにくい欠点を挙げて、また思う存分DISれるのに、肝心のジョブズがいなくなってしまった。
要するに、2000年前後から以降、成功したジョブズをあまのじゃく的に批判したり、失敗した彼を勝手に擁護しては喜んでいたのが俺だったのだ。言い方を変えれば、自分のメディアに対する価値観の基準にジョブズを置いていたと、この際言ってもいい。だから書いていて気がついたのだが、俺のいままでの仕事はジョブズとの差分を説明した方が早い。iTunesとOTOTOY、iBooksとBCCKS、AppleTVとSPIDER。こうやって並べてみると、より一層分かりやすい。しかしこれからは、ジョブズが先に進んで、俺の進むべき道を明るく照らしてくれたり、早く進みすぎて勝手にこけて危険を示してくれることは無い。自分自身で朧げなヴィジョンを具体的に言葉にし、実行することで現実化しなくてはならないのだ。それがしんどいのはどうでもいい。ひたすら寂しい。
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