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recommuni四方山話漁師でも農民でも商家でもないサラリーマン家庭に生まれ育ったボクには、親から叩き込まれたワザみたいなものがない。そしてサラリーマン家庭が多い日本では、全体的にそうしたものは今やごく少ないに違いない。
そんな日本でも、今でもほぼすべての家庭で、ちゃんと親から子へ伝えられているワザがある。それは箸の使い方だ。箸を使うのは日本人だけではないが、2本の棒だけで豆を掴み、魚の身をほぐし、麺を切る。これは立派な伝統芸である。
魚がメインだったか肉がメインだったかで、自然使う道具も違ってきたのだろうが、西洋世界の、切って突き刺す、というナイフ&フォークの野蛮さに比べ、箸文化のなんと繊細で優雅なことよ。
と長いこと思っていたが、数年前にスコットランドでレコーディングの仕事をしたとき、食事は賄いさんの作ってくれるシンプルな家庭料理をみんなで食べるのだが、ごく平均的な当地の若者であろうアシスタント・エンジニア君のナイフ&フォークの使い方が実に鮮やかで、見ていて気持ちよかった。ライスを食べるときに、フォークの背にライスを乗せて食べるのが正式だなんて学んだが、なんかうまくいかなくて結局はフォークの腹ですくって食べることが多いけど、そういうのを実にさっさか彼はできるのだ。ああ、ほんとはこういうふうに使うんだ、と判ってもできないんだけど。あたりまえかも知れないけど、道具は使い方でいくらでも優雅に見えるんだねぇ。
むしろ、日本で、肉食や西洋風食事が増えるにしたがい、ナイフ&フォークを使いこなせないまま、箸文化がおろそかになっていくのが嘆かわしい。
以前問題になった給食の先割れスプーンは言語道断として、よく野菜サラダ用にフォークだけ出されることがある。あれはなぜ?フォーク単体では突き刺すことしか(まあスパゲティの「巻きつける」という使い方は例外として)できないんだから、トマトはいいとしても、葉っぱ類をどうやって食べろというのだ。レタスほど突き刺して食べることに向いていないものはないと思う。ナイフ&フォークの使い方を理解しないで西洋気取りをしているだけとしか思えない。
一方、これはマナーの問題だが、箸は片手で使えるので、持たないほうの手をぶらっとテーブルの下に垂らしたまま右手だけで食べてる人が若い子を中心に多い。あれはみっともない。最近はスーツ姿のいい歳をしたおっさんにもよく見かける。話は違うけど、おばちゃんパワーがどうのとか言うけど、マナーの悪いおっさんの増加はもはや社会問題だね。
日本の食事は本来片手に箸を、もう一方の手に食器を持つものだ。それが食事が洋式に、つまり大きめの皿などで供されることが増えたために、持ち上げるのも変だから片手があまる。そのやり場がないワケだ。これはテーブルの上に置くか食器に添えるべきである。
うちの息子たちもダメだ。だからしょっちゅう「左手!」と言って叱ってる。左手を垂らさないで、テーブルの上に出しなさい、という意味である。でもそのときだけ。ちっとも直らない。
親から子に、それだけのことも伝えられないなんて、自分が情けない。
2005.03.13
福岡智彦
コメント
交差してしまうんです。しかし、こぼさずにちゃんと使えます。
実家に帰ると母親が「恥ずかしいから直しなさい」と言うんですが、父親も僕と同じ使い方なんです。
ある意味うちでは父から息子へと、箸の間違った使い方は伝わりました...。