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recommuni四方山話松本隆さんの対談集が本になった(『KAZAMACHI CAFE』/ぴあ)。その中の大瀧詠一との対談がめっぽうおもしろかった。
大瀧さんと言えば、1984年の『EACH TIME』以来、オリジナル・アルバムはひとつも出していないという超弩級に寡作な人だけど、対談では「とにかくやたら忙しい」を連発している。何が忙しいかについては触れられていないが。「(新作を)出さないと、自分の中で溜まっちゃわない?」という松本さんの問いかけにも「全然」と即答。「外から何かがぶつかってきたときに、初めてそれを返すだけで、……だから、自分の中に溜まるってことはない」と言い切る。つまり、大御所になってしまったから、大瀧さんに「何か」をぶつける人がいないということなのか。ソニー・ミュージックの名物ディレクター白川さんも、定年で故郷に帰ってしまったし。
それはともかく、とても興味深かったのは大瀧さんの「歌と声」に対するコメント。本のネタばらしになってしまうかもしれないが、これはやっぱり披露したい。
松本さんの「大瀧詠一は“声”だね。男性ヴォーカリストの中ではいちばん僕の詞に合う」という発言から、大瀧さんは、自分のソロ・アルバムではサウンドが目立って取り沙汰されがちだが、結局は声にいちばん力点を置いていると語る。そして「歌い方とは声の出し方」であることを説明する。
「声は作るものだから。みんな、声は自然に出てると思ってるけど、それは歌じゃない。ただの発声なんだ。……中略……“本能は技術では出せない”とかって言いたがるんだけど、違うんだ、技術が至らないだけ。下手なだけなんだよ」
松本さんの詞が、「水面がきらきら光っているように、乱数で光る」から、詞を一度全部ローマ字にして、音で分解し、どこを光らせてどこを暗くしてということを細かく検討、それを、完全な没我状態でもできるようになるまで繰り返したという。
「だから松本・大瀧作品で大瀧が歌ったものは絶対に飽きない。それはなぜかというと、キラキラ光る部分が毎回違うように、乱数になるように仕掛けてあるから。他の人が歌ってもああはならない」と言い切る。
大瀧さんのレコーディングにまつわるエピソードで、歌入れ(歌を録音すること)のときはスタッフもエンジニアもスタジオには入れず、自分でテープレコーダーを操作しながら、何時間もこもりっきりでやっている、という話を聞いたことがあるが、当時ボクは、きっと性格が極端にシャイだから、だと軽く思っていたんだが……こんな秘密、と言うか深ーい作業がなされていたとはね。
いやー、音楽ってほんとにおもしろいですね!(当然水野晴郎風)
2005.04.24
福岡智彦
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