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recommuni四方山話世田谷線に乗る用があったので、小田急を豪徳寺で降り、世田谷線の山下に向かう。お昼時だったので蕎麦でも食べようと思ってたら、小さな中華料理屋の前に「ラーメン200円」と書いてあるのが目に入る。ああそうだ、この店、ずいぶん前だがテレビで紹介していたなぁ、今時こんな値段ということで。
思わず入ってしまう。おじいちゃんが「いらっしゃい」と機嫌よく迎えてくれる。おお、この油くさい湿った暖かさ。石油ストーブである。狭い店内で、客が吸っているタバコの臭いも混じって、懐かしい感覚とともに一瞬ウッと息が詰まりそうになる。
ここでまずはともかく「200円ラーメン」だろうと思うが、ボクの悪い癖でいつもちょっとだけ迷って判断をミスる。「もやしソバ 300円」とあるのを見つけて、つい「もやしソバ」と言ってしまう。
すぐに訪れる軽い後悔感を打ち消すために店内を見回す。テーブルもイスも安物、薄汚れた店内、壁になぜか「ボーリング新聞」が2枚も貼ってある。お店の人が同好会にでも入っているのか。「ハウスボールの選び方」なんて記事をヒマつぶしに眺める。指へのフィット感がだいじなのだそうだ。きつくてもゆる過ぎてもだめ。親指穴に親指を入れ、ボールを回してみて、少し指に当たりながら、でもスムーズに回るのがよいとのこと……。
タバコを吸いながら新聞を広げていたとなりのテーブルの人に、ラーメンが運ばれてくる。これが「200円ラーメン」か?つい横目でチェック。直径2cmほどのチャーシューがせつないが、見た目には立派な東京ラーメンだ。でも麺の量が多そうだから大盛りかな?
やがてボクにも「もやしソバ」が運ばれてきた。わぁ!ほんっとに麺ともやしとスープだけの純然たるもやしラーメンだ。あんかけになっているところに若干愛嬌が感じられるがそれ以外は、何の邪念もないストイックさで、「通常のラーメン+もやし」というイメージを抱いていたボクは少々がっかりしたが、でもここまでシンプルなもやしラーメンに、曲がりなりにもお店でお目にかかるのは初めてなので、その驚きを味わえたってことで相殺かな。
そしてなかなかうまい。スープはあっさり東京風で、全体にしつこくなくあきがこない。うん、これで300円はやっぱ激安だよ。
ところで、食べながらメニューをよく眺めてみると、全部が全部めちゃくちゃ安いということではない。たとえば餃子なんか350円だ。ライスは並で200円。なんとラーメンとライスが同じだ。つまり「200円ラーメン」は目玉商品、客寄せパンダ的な役割で、赤字覚悟で提供しているのかもしれない。それにしては安さをことさらアピールするワケでもなく(表の看板も単なるメニューリストだからね)、商魂も邪心もまったく感じられないのだけれど……。
食べ終わったとなりの客が立ち上がる。店のおじいちゃんが「はい、ラーメン大盛り、300円ですね」と声をかける。やはり大盛りだった。だけど大盛りでも300円なのだぁ。
もう一度わざわざ来たいと思うほどではないが、今度来るときは絶対に「200円ラーメン」を食べよう。
2005.02.13
福岡智彦
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